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瞼の絵 [夢]

 夕べは寝つきが悪く、マイスリーのお世話になった。
 それにしてもなかなか寝付けない。なんか気になる、というかなんかいる気がする。いや、息子は隣で寝てるんだけどそれとは別に「何か」いる。
 ようやくウトウトしだしたところ、起こされる。布団の上からだれかが、ほんの軽くなんだけど、僕を揺り動かす。
 はっとして目をあけて布団の上を確認したりあたりを見回しても誰もいない。
 薬も効いて来てほんとに眠くなりまた布団を被る。
 するとまた、何かがそっと僕を揺り動かす。間違いなく布団の上からの軽い圧力を感じる。起こそうという意図ではなく、布団の上から誰かがさすっている感じ。
 もう一度だけ起き上がりあたりを探るがやはり何もないし、「何か」の気配もなくなっている。
 まあ、それほど害がある感じでもないし、さすってくれるなら気分よく眠れるだろう、ということであきらめて布団にもぐる。
 どうかな、と思っているとやっぱり、何かが僕をさすっている。
 ああ、いいや。気持ちいいじゃない。ありがとう。誰かにさすってもらうなんていつ以来だろう…
 そんなこと思いながらまさに眠りにつこうとしているそのとき、ふと気がついた。
 なんか目の前に幾何学模様と数字の羅列が縦横斜めランダムに極彩色で配置されている。
 あれ?と思って目をあけると消えている。闇だ。
 目を瞑るとまたその模様が映りこむ。何度か繰り返したが同じ結果だし、現れる模様は毎回寸分違わぬので、ああ、これは瞼の裏側に描かれたものなんだな、と思う。きっと生まれてこのかたずっとあったのだがこの歳になってやっと気がついたのか、などと思いながらその模様に魅入るのだった。不思議と懐かしさがこみ上げてくる。いつかどこかで見た模様だ、と。そりゃそうだ。無意識下でずっと45年も見てきたのだから。
 さすってくれる謎の手も手伝って、ゆりかごで眠る赤子のごとく僕は深い眠りについた。

 眠りの底で僕は古い家屋の急な階段を登っていた。電気を使った明かりとおぼしきものは見当たらず、どこからかわずかに漏れ出てくる光を頼りに昇っていた。うっかり足を踏み外すと、誰もいない、何の気配もなかったはずなのに、背後から二人の年配の男性二人が「あ、あぶない」「だいじょうぶですか」と声を僕にかける。僕は振り向いてその二人をみやり、大丈夫ですと言おうとしたそのとき、二人の顔は恐怖にゆがみ声にならぬ声を発しながらあたふたとその場から立ち去った。
 なんだろう、僕がよっぽど怖い顔でもしてるのかしらん。そんなふうに思ってまた階段を昇るとそこは天井裏。暗くてよくわからないが、なんとなく靄がかかっているような感じがする。その靄のむこうになにか影がある。影は動いてるようでもあり静止しているようでもある。如何せん暗くてよくわからない。目を凝らしてじっと焦点をあわせるように見据えると、やはりそれは何か人影のようであり、わずかに動いている。と、突然、言いようのない恐怖にかられ、僕は昇ってきた急階段を一番下まで転げ落ちてしまった。不思議と痛みはなかったが、恐怖で身動きできず亀のように丸まって小刻みに震えていた。
 おそらくさきほど立ち去った二人であろう人たちが、そんな僕を両脇から抱え、どこかへ連れ去ろうとしている。それもまた恐怖を助長し僕はもう石だった。丸めこんだ体で外界からの情報を遮断し、僕は自分自身に落ちていく。遠くのほうへ行ってしまった感覚は僕が移動させられていることをわずかに伝える。
 どれくらいの時間が経ったのかまるでわからないが、ふと気がつくと闇の中。息も苦しいし、身動きも取れない。ザッザッという音が上のほうでしている。身体にかかる圧力がどんどん増えているようで自分がおかれた状況がまるでわからない。ますます身動きが取れなくなっていくうち、どうやら自分は土の中に埋められているらしいことがわかってきた。
 どうしようもないまま、暗闇の中、時間だけが経っていく。湿った土から虫たちが出てきて僕の身体を這い回り、鼻や口やら入れそうな穴へと侵入してくる。口の中にいっぱい詰まった土の中にももぞもぞ動く虫がたくさんいて、それは喉の奥へと進んでいく。ああ、こうして死んで行くのだな。死ぬ瞬間はどんなことになるのだろう。
 幸い目は閉じられており、瞼に映る、懐かしい極彩色の幾何学模様を眺めることは出来た。見ているだけで落ち着いた。やがて意識が遠くなりかけ、ああ、これは眠るのではない、死なんだ、きっと、そう思ったとき突然天啓がひらめいたかのように全てを理解した。この幾何学模様もてんでバラバラに置かれた数字も、今は完全に理解できた。理解できた、ということも理解できた。そして、
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